決定版!寄生虫アニサキス対策法

アニサキス対策法_TOP写真

魚を釣って、または丸ごと買って、自分でさばく人には身近な存在なのが、アニサキス
サバやイカなどに寄生する回虫の一種ですが、生きたまま人間の体内に取り込むと、胃壁や腸壁に噛み付き大変な激痛に襲われる小さくても恐ろしい寄生虫なのです。

この記事では、
「そもそもアニサキスって、どんな虫?」という疑問をお持ちの方、
「外食で生魚食べてからお腹痛いんだけど、大丈夫かな?」と不安な方、
「釣った(買った)魚を自分でさばいて料理したいのだけど、アニサキスが心配・・・」という方や
「一般的に知られているアニサキス対策って、効果があるの?」という方も含めて、豊富な実験データを基に決定的な対策法を伝授します。

この記事を一通り読んで頂ければ、アニサキス恐れるに及ばず!ということが分かって頂けると思います。
調理工程においてしっかりとした対策を行えば心配する必要は全く無いのです


◆ 目次 ◆

1.アニサキスとは?
– こんな虫
– 「サバ虫」と言われる理由
2.アニサキス症について
– 症状
– 治療
– 予防
– 他にもあるこんな関連症
3.アニサキスはこれに弱い!
– 簡単且つ確実な対策は、加熱!
– 加熱しない料理の一手段として冷凍
アルコールは除菌、除虫にも役立つ
– 意外にも食塩も効果あり!
– 所詮小さな虫。外傷に弱い。
4.しめサバ(きずし)作りにおけるアニサキス対策
– 対策の第一歩は、新鮮な魚を使うこと
– 内臓は出来るだけ早く取り除く!
– 腹骨・腹腔は、大胆に切り取る
– 塩漬けはアニサキス対策の一つでもある
– 酢に混ぜたい調味料はこれ!
– 冷凍するなら、このタイミングで
– 切り方にも気を配りたい
5.食べる時にも対策ができる!
– 普通にやってるこれが対策の一つ
– もう一つの簡単な対策法
6.実験データ
-A.調味料漬け実験
-B.ダメージ実験
-C.冷凍実験


【閲覧注意】
以下、アニサキス虫および魚の内臓などの写真・動画を掲載しています。
苦手な方はご注意ください。

アニサキスとは?

そもそもアニサキスとはどんな生き物なのか?相手を知らずして対策はできませんよね。
Wikipediaの冒頭では、こう記載されています。

*******引用ここから*******
アニサキス(学名:Anisakis)は回虫目アニサキス科アニサキス属に属する線虫の総称で、海産動物に寄生する寄生虫である。ヒトにアニサキス症を発症させる原因寄生虫だが、ヒトへ感染するときには主にサケ、サバ、アジ、イカ、タラなどの魚介類から感染する。
*******引用ここまで*******

「感染」と書くと、見えないウイルスみたいなものを想像するかもしれませんが、アニサキスはしっかり見えます。以下、画像と共にもう少し詳しく見てみましょう。

こんな虫

アニサキスGIF動画

これはサバから摘出した元気の良いアニサキスです。
ミミズを小さく、白色透明にした様な外見をしていますね。
動画内中央の個体で全長3cm程ありましたが、サバなどの中型魚に寄生しているアニサキスは、1cm前後のサイズが多いようです。
更には、あまり知られていませんが、同じくミミズの様に、「頭部」があります。

頭部がある方

両先端近くを見ると、そのどちらかに他より濃い白色部位があり、そちらが頭部となります。
人間の胃壁や腸壁に穴を開けようとするのは、頭部の方からです。 

「サバ虫」と言われる理由

アニサキスは、前述の通り、サケ、サバ、アジ、イカ、タラの他色々な種類の海産魚に寄生しています。
その中でも寄生する個体数が多く、その一方で生食(酢締めなど)が人気であり、他の魚よりアニサキス症発生確率が比較的高いのがサバです。
その為、通称「サバ虫」とも言われています。
以下、サバから見つかったアニサキスの写真です。

アニサキス発見(胃袋)

(↑胃袋や腸などの内臓に多く付着)

アニサキス発見(腹腔内側)

(↑内臓除去後、腹腔の内側にいた個体)

これら写真から分かる様に、ほとんどのアニサキスは、内臓周りの腹腔内にいます。

但し、一部例外がある時もあります。

アニサキス発見(腹腔外側)

(↑腹腔の外側に侵入した個体)

魚の鮮度が落ちてくると、アニサキスは腹腔内から飛び出し、筋肉側に侵入することがあります。

次に、どの位の数が実際に寄生しているのか?→ 調べてみました。

表)アニサキス寄生数結果

いらぬ風評被害があっては良くないので、産地は記載しませんが、いずれの検体も日本の港で水揚げされたサバ(マサバ、ゴマサバ)です。
平均すると、サバ(35-40cm)一尾あたり、22匹のアニサキスが寄生していたという調査結果です。
別の見方をすると、個体によりアニサキス寄生数に随分と差があることに気が付きます。
実は、一尾一尾の個体による違いだけでなく、その生息域によっても、寄生数に大きな差があることが分かっています。

大量のアニサキス

(↑一尾のサバから摘出されたアニサキス)

アニサキス症について

この記事で説明している対策法(下記詳述)で万全と考えていますが、一部を手抜き、妥協、または判断を誤ったためにアタッてしまうことがあるかもしれません。
それとも外食で生魚を食べた後に、調子が悪い・・・ということがあれば心配になります。
生きたアニサキスを体内に取り込むことにより、アニサキス食中毒(アニサキス症)を発症する可能性があります。

アニサキス症イメージ写真

気になるその症状、治療方法、そして予防方法について解説します。

症状

発生部位により「胃アニサキス症」・「腸アニサキス症」の2種類があります。
大半は、胃に起こる「胃アニサキス症」です。
魚介類の生食後数時間経ってから、強烈な腹部の痛み、吐き気、嘔吐、悪心などの症状が現れます。
体内に侵入したアニサキスが、胃壁・腸壁を突破しようと噛み付くことにより、部分的アレルギー反応が起こり、結果激痛を感じると言われています。
他の関連中毒症(後述)と違うのは、のたうち回るほどの強烈な痛みがあること、および下痢症状が無いことです。

治療

胃アニサキス症の場合は、内視鏡検査および虫体の摘出。
腸アニサキス症の場合は、対症療法が試みられ、場合によっては開腹手術が必要になる
こともあります。
残念ながら、現在のところ、体内に侵入したアニサキスに対する効果的な駆虫薬は開発されていません
従って、アニサキス症が疑われる症状がある場合、我慢したり自己療法を試みることなく、早急に医療機関を受診しましょう。

予防

魚介類の加熱・冷凍によりアニサキスを死滅させることができます。
次章アニサキスはこれに弱い!にて詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
外食で生の魚介類を食べるときは、信頼のできるお店を選ぶ、よく噛んでたべるなど、出来る範囲でリスクを軽減するようにしましょう。

他にもあるこんな関連症

特に生サバの場合、アニサキス以外にも色々なリスクがありますので、関連する中毒症やその症状について軽くおさらいしておきます。

【ヒスタミン食中毒】
特に赤身魚(サバやマグロなど)を室温で放置すると細菌(ヒスタミン生成菌)が増殖し、結果ヒスタミンと言われる物質が大量に産出されます。
人間が多量のヒスタミンを摂取すると腹痛、下痢、嘔吐、悪心、蕁麻疹などのアレルギー様症状を起こすことがあります。
これがヒスタミン食中毒です。
魚介類の低温流通発達に伴い減ってきているヒスタミン食中毒ですが、現在でも依然として発生しています。
通常、症状は比較的軽く、自然治癒することもありますし、抗ヒスタミン剤という薬で治すことができますが、症状が「サバアレルギー」「アニサキスアレルギー」など食物アレルギー(下に詳述)のものと似ているので、注意が必要です。

【腸炎ビブリオ食中毒】
海水中に生息する細菌である腸炎ビブリオに汚染された魚介類生食することによって発症する食中毒です。
症状は、激しい腹痛、下痢、嘔吐、発熱など。
数日で回復することが多いのですが、免疫低下した人の場合、まれに重篤化する例もあるので、注意が必要です。
魚介類の適切な冷蔵保存/一度使ったまな板は消毒する/生魚は真水でよく洗う/加熱料理する、などの対応で発生を防ぐことができます。

【食物アレルギー】
サバや鮭などの魚介類、またはアニサキスそのものがアレルゲンとなりえます。
蕁麻疹、かゆみ、赤みなどの皮膚症状や咳、呼吸困難などの呼吸器症状、そして腹痛、吐き気、嘔吐などの消化器症状など、様々な症状が現れます。
これら複数の症状が全身にでるのが、アナフィラキシーといいます。
特に血圧低下、意識を失うなどのショック症状が出る場合は、命に関わり大変危険な状態となりますので、至急救急車を呼ぶべきです。
症状が蕁麻疹など皮膚症状だけで軽い場合でも皮膚科を受診し、必要に応じてアレルギー検査(血液検査)を行い、自分にとってのアレルゲンを把握しておくことが大切です。
筆者(当サイトの管理人)は、アニサキスのアレルギー持ちです(下写真は、アレルギー検査結果報告書の一部)。
アレルギー反応血液検査結果報告書(部分)
サバには反応していませんが、アニサキスには強く反応していることが分かります。

尚、どの病気にも言えることですが、ネットや本などの情報をもとに自己診断するのは危険な場合があります。
上記のような症状が現れたら、早めに医療機関を受診しましょう

アニサキスはこれに弱い!

 
この章では、アニサキス対策における基本的知識として知っておいて頂きたい彼らの弱点をまとめています。
目視で見つけたアニサキスは指で取り除けば済みますが、潜り込んだアニサキスは簡単には見つけられません。
ここで紹介する5つの項目は、アニサキスを瞬時に死滅させるものから、時間をかけてでも弱らせ死なす効果があるものです。

簡単且つ確実な対策は、加熱!

地球上の生物全般に言えることですが、摂氏60℃を超えるような高温環境では生物は生きられません。
当然アニサキスも同様であり、寄生先である魚が加熱料理されれば、アニサキスも死滅します。
摂氏70℃のお湯にアニサキスを投入すれば、一瞬で死滅すると言われています。

従って、釣った(買った)魚を加熱料理するだけの人であれば、そもそもアニサキスの心配は無用なのです。
例えば、サバであれば、味噌煮込み、煮付け、竜田揚げ、塩焼きなど、またサケであれば、ホイル焼き、石狩鍋など、全ての加熱料理は安全に食べられます。

加熱しない料理の一手段として冷凍

高温だけでなく、「寒冷」も生物の大敵です。
氷点下-20℃の環境で24時間冷凍すれば、アニサキスは死滅すると言われています。

クレイジーフィッシングで行った実験(詳細はこちら→「冷凍実験」へ)では、寄生先であるサバを丸ごと家庭用冷蔵庫で12時間冷凍すれば、100%のアニサキスを死滅させることができました。
また摘出した元気なアニサキスを製氷皿に入れ、真水と一緒に冷凍した結果、6時間で100%死滅させることができました。

これら実験から分かることは、アニサキス単体であれば、24時間もの長時間の冷凍は必要ないものの、料理の材料であり寄生先でもある魚を冷凍させる場合、魚体のサイズや冷凍庫のスペックなどにより、ある程度長い時間を見たほうが無難ということです。
大きな魚を内部までカチカチに凍らせるには長い時間が掛かります。
「氷点下-20℃の環境で24時間冷凍」というのは、安全を見た数字なのです。

これまでの説明で、魚を冷凍するのも効果があることが分かりました。
従って、加熱しない「刺身」「寿司」「しめサバ(きずし)」などの料理を作る場合、柵(さく)の状態で魚を冷凍しておくのもアニサキス対策の一つの手段と言えるでしょう。

アルコールは除菌、除虫にも役立つ

アルコールに除菌効果があるのは、よく知られています。
アルコール入りの除菌スプレーやウエットティッシュなど多くの商品が販売されているのはご存知の通りです。

さて、このアルコールですが、アニサキスには効果があるのでしょうか?
クレイジーフィッシングで行った実験(詳細はこちら→「調味料漬け実験」へ)では、アルコールを含む調味料の中ではアニサキスは長く生きられないことが分かりました。
料理酒、みりん(アルコールを殆ど含まないみりん調味料を除く)内では、僅か数分程度で低活性化(弱った状態)し、30-40分程度で死滅しました。そしてより度数が高いウイスキーでは、わずか4分で死滅するという一番良い結果が出ています。
「加熱」程の即効性は無いものの、料理酒やみりんを上手く活用すれば、より確実なアニサキス対策が出来ると言えるでしょう。

注:工業用アルコール(メタノール)は、人間にとって毒です。決して料理には使わないでください。

意外にも食塩も効果あり!

海にいる魚の中に寄生するアニサキス、塩分には強いのでは?と思ってしまいますが、意外にも塩分にも弱いことが分かりました。

クレイジーフィッシングで行った実験(詳細はこちら→「調味料漬け実験」へ)では、食塩を最大限に溶かした水(26%程度の食塩水)にアニサキスを投入すると、10数分で死滅するという結果が出ました。
これは浸透圧の高い食塩水に、アニサキス体内の水分が吸い取られる為におこる事象と思われます。

塩漬けされた食品が腐らないのは、食塩によって細菌の繁殖が抑制されているからです。
魚を塩漬けすることで、腐りにくくなり、また、ある一定のアニサキス対策効果が見込まれます。

所詮小さな虫。外傷に弱い。

アニサキスを実際に触ったことがある人は分かりますが、その体は意外にしっかりしています。
先に、「ミミズに似た外見」と書きましたが、その体はミミズほど柔らかくありません。

そのしっかりした体のアニサキス、どの程度外傷に強いか、実験してみました。(詳細はこちら→「ダメージ実験」

この実験では、よりダメージが少ないであろう、頭部から離れた尾先端に近い部位をカットしています。
それでもカット後、体液が徐々に抜けていき、それに合わせ弱り、最終的には30分前後で死滅しました。

また急所である頭部をカットすると即死することも分かっています。

以上のことから、料理においては、飾り包丁など、魚に切り目を入れることもある一定の効果があることが分かります。

しめ鯖(きずし)作りにおけるアニサキス対策

アニサキスの多いタラは、そもそも生で食べることはないし、寿司や刺身で人気のサケ(サーモン)は、大半は外国産で一度急速冷凍されたものが市場に出回ります。従って、アニサキスの心配は不要というわけです。
(国産生サケはやはり注意が必要です)

一方、サバはどうでしょう?ある程度調理された冷凍もの、そして調理前のものでは、氷水でキンキンに冷やされた生サバが普通にスーパーの鮮魚コーナーに並んでいます。
この章では、この「生サバ」をさばいてしめサバ(きずし)を作りたい!という人の為に、実際の料理工程におけるアニサキス対策ポイントを解説します。

※「鯖(サバ)の生き腐され」という言葉がある位、サバは鮮度落ちが早い魚です。生サバを釣って(買って)きて、調理前に家庭の冷蔵庫で一度冷凍するのは、次の自然解凍中に鮮度が落ちてしまうので、しめサバの素材としては不向きです。
実際、冷凍実験で使った検体は、解凍後しめサバには最早使えないほど鮮度が落ちていました。

対策の第一歩は、新鮮な魚を使うこと

新鮮なサバ

既述の通り、サバの鮮度が落ちてくると内臓周りにいたアニサキスが筋肉部に侵入してくることがあります。
それであれば、できるだけ鮮度を保った状態の個体を素材として使うべきなのは言うまでもありませんね。

スーパーなどで買う場合は、表皮が黄色っぽくなってない、腹部がしっかりしてフニョフニョしていない個体を選びましょう。
釣ったサバの場合は、最低限血抜きだけは現場で行い、氷または氷水でキンキンに冷やした状態で持ち帰りましょう

内臓は出来るだけ早く取り除く!

多くのアニサキスが寄生している内臓を取り除いてしまえば、それ以上筋肉部に侵入することはできないわけですから、出来るだけ早く取り除けば、それだけリスクが軽減されるわけです。

サバを買う場合は、鮮魚コーナーで「調理」を頼めば、頭と内臓を落としてくれる所もあります。
丸々持ち帰る時は、寄り道せず真っ直ぐ帰宅、そして直ぐに頭と内臓を落としてしまいましょう。
釣った魚も同様ですが、現場で先に作業を行っておけば、より安心ですね。

上述の「新鮮な魚を使うこと」で説明した対処、および「内臓を早く取り除く」というのは、腐敗を遅らせる効果もあり、サバ食で起こりやすいヒスタミン食中毒を防ぐことにもなります。

腹骨・腹腔は、大胆に切り取る

新鮮なサバから、早くに頭と内臓を落とし、更には3枚に下ろした後、腹骨・腹腔を切り取ってしまえば、既に安心度98%くらいにはなっています

腹骨と腹腔の除去

通常、腹骨(および腹腔の薄い膜)を切り取る作業は、出来るだけ薄くして、食べるところを多くしたいものですが、しめサバの場合は、写真の様に大胆に切り取ってしまうほうが、より安全です。
アニサキスが筋肉部に侵入すると言ってもほとんどのケースは膜のすぐ裏にいますので、このように厚め(3-5mm程度)にすれば、アニサキスが侵入していた場合でも一緒に取り除けます。

※ここまでさばき終わった後は、まな板消毒を忘れずに行ってください。

(これから先の対策は、安心度を出来る限り100%に近づける為のものです。)

塩漬けはアニサキス対策の一つでもある

一尾のサバをさばき終われば、両サイド2枚の柵(さく)ができます。
しめサバ作りにおける次の工程は、この柵を塩漬けします。

塩漬けの目的は、
1.余計な水分を落とし、臭みを抜く。
2.腐敗を遅らせる。
3.下味をつける。
ことにありますが、アニサキス対策としても一定の効果があることは、既述の通りです。

柵が隠れる位ふんだんに食塩を使って、漬けてください。
※漬ける時間は、人によって様々です。クレイジーフィッシングが行ったネット調査では、15分~1日と人によって随分違うことが分かりました(脂の乗り具合で時間を調整する人もいます)。
ちなみに、管理人は2時間漬けるようにしています。

酢に混ぜたい調味料はこれ!

酢は殺菌効果・臭い消しなどに効果がある優良調味料ですが、残念ながらアニサキスには全く効果がありません(参照:調味料漬け実験)。
確かに、アニサキスが酢に含まれる酸に弱いのならば、人間の胃酸にもやられますよね。
アニサキスは酸に強く、元気な個体が人間の胃に入ったら、胃酸などへっちゃら、縦横無尽に暴れられるというわけです。

しめサバ作りの塩漬け工程が終わったら、塩を洗い流し、小骨を抜き、次は酢漬け工程に入ります。
酢漬けと言っても人によってやり方は様々で、30分だけ漬ける、という人もいれば、12時間しっかり漬ける人もいます。
また、酢オンリーの人もいれば、酢にみりん/料理酒/砂糖等を混ぜた合わせ酢に漬ける人もいます。

管理人のお薦めは、酢3:みりん1:砂糖0.25の合わせ酢に6時間程漬けるやり方です。
みりんや砂糖を使うことにより、程よい甘味が付き、酢の酸っぱさを少しだけ抑え、いい感じの味わいになります。
またアルコール分を含むみりん(注:「みりん風調味料」はアルコールを殆ど含みません)を使うことにより、更なるアニサキス対策効果を見込めます

冷凍するなら、このタイミングで

酢漬けが終わると、後は白色透明の薄皮をむき、切る、そして食べるだけなのですが、以下のような方は、このタイミングで冷凍することをお薦めします。

・やっぱりどうしてもアニサキスが心配でならない。
・お客様に出すので、絶対に失敗は許されない。
・量が多いので、半分残して後日食べたい。

-20℃で24時間冷凍するとアニサキスを死滅させることができると既述しました。
ここまでに説明してきた各種対策を行った上で、更に冷凍まですれば、これ以上無い!ってほど完璧な対策と言えるでしょう。
安心度は『限りなく』100%に近い状態です。
(冷凍しなくても『かなり』100%に近いと思って頂いて大丈夫です)

冷凍する場合は、柵の水分を拭き取り、ラップに包んだ状態で冷凍庫に入れます。
また、お薦めは、料理酒に漬けた昆布で柵をはさみ、その上からラップで包みます。
そうすると昆布の旨み成分がサバに移り、冷凍でも大変美味しいしめサバが楽しめます。

注意点として、冷凍後の解凍は、常温でなく、冷蔵庫の中で自然解凍してください。

切り方にも気を配りたい

最後に、柵を食べやすいサイズに切る工程ですが、ここでもちょっとした対策をしてみます。
簡単に言えば、「薄く切る」ことです。

しめ鯖(細く切る)

マグロの刺身などは分厚く切るほうが喜ばれますが、しめサバの場合、既に塩や酢で味が付いてますので、薄く切ったほうが、より美味しく食べられます。

そして、万が一、アニサキスが身肉の奥深くに侵入していたとしても薄く切れば、それだけ奴らを切り刻める可能性が高くなるわけです。
ダメージ実験で確認していますが、一番ダメージが少ない尾側であっても体が切れたアニサキスは、最早死を待つだけです。

それでも少し厚めに切りたいという人は、下写真の様に中央に切り目を入れるのも手です。

しめ鯖(中央切り目入れる)

食べる時にも対策ができる!

ここまで、しめサバを『作る側』の人の為にアニサキス対策法を説明してきましたが、ここでは『食べる側』の人の為の対策法を紹介します。
自分で作ったしめサバを食べる、または家族が作ったものを食べる、それとも飲食店で食べる、いろいろなケースがあると思いますが、食べる時にちょっと気を付けると安心です。

普通にやってるこれが対策の一つ

何も特別なことではありません。
「よく噛んで食べる」です。
しめサバに限らず、何を食べるにしても大切なことですよね。

既述しましたが、アニサキスの体は意外に強いので、サバの身肉と一緒にアニサキスをカミカミしても体を切断することはできないかもしれませんが、再起不能なまでに弱らせることができます。
仮に完全に死ななくても最早人間の胃腸で暴れることはできないでしょう。
特に、他人が作ったしめサバを食べるケースで不安な方は、意識してよく噛んで食べることをお薦めします。

もう一つの簡単な対策法

これは気休め程度のものですが、「ワサビを付けて食べる」です。
調味料漬け実験で、ワサビもアニサキス対策効果があるのが分かっています。

但しこれは、大量のワサビを真水に溶かした液体を使ってます。
醤油にちょこっと溶かしたワサビではそれほど効果は無いものと思われます。

それでも胃の中に入ったワサビ成分がアニサキスの動きを抑制してくれることを期待できます。

実験データ

この章では、クレイジーフィッシングで行ったアニサキス対策法を考える上での各種実験の内容・結果を紹介します。
アニサキス検体は、採取後真水に投入し、10分経過後、高活性(元気が良い)のものだけ使っています。

調味料漬け実験

【目的】
しめサバを作る時、または食べる時に使われる(または使うことができる)調味料のアニサキスに対する効果を検証する。
その結果を実際のしめサバ作り工程に活かし、より安全に作るためのレシピ考案に役立てる。

【実験方法】

  1. 酢/料理酒/ウイスキー/みりん/砂糖水/食塩水/わさび水/醤油を用意し、それぞれ小皿に入れ、5mmほどの深さする。
    調味料漬け実験(小皿並べ)
  2. アニサキス検体を3匹(料理酒は9匹)をそれぞれの小皿に入れる。
  3. 検体が死んだ時間を記録する。
  4. 調味料毎の平均値を算出する。

【結果】
表)調味料漬け実験結果

  • 酢には、有意なアニサキス効果が全く無いことが分かりました。
  • アルコール成分を含む料理酒/ウイスキー/みりんは、有意な効果が認められ、アルコール度数が高いほど、効果が強いことが分かりました。
  • 弱いながらも砂糖も効果が認められました。
  • 食塩および食塩を含む醤油も有意な効果が認められましたが、醤油の効果は弱く、醤油に含まれる他の成分がアニサキスを助ける方向に働いている可能性があるかもしれません。(追加検証要)
  • わさびも効果が認められましたが、少量では効果が薄いものと考えられます。

【結果の補足】
表に記載の時間は、検体が死んだ時間をベースにしていますが、その前段階として、動きが極端に弱まる低活性状態があります。
低活性状態でも効果は十分にあるものと考え、結果に記載した内容は、表に現れない低活性状態になった時間も考慮しています。

※ウイスキーは、アルコール成分の効果をより明確にする為に参考として行いました。

ダメージ実験

【目的】
アニサキスの外的ダメージに対する強さを検証する。
その結果を魚の柵をカットするより良いやり方を考える上での参考とする。
また人間の咀嚼(そしゃく)行為の有効性を確認する。

【実験方法】

  1. アニサキス検体3匹の尾側先端3mmを切断する。
    ダメージ実験(カット写真)
  2. 真水深さ5㎜に浸した小皿に、検体を全て入れる。
  3. 検体が死んだ時間を記録する。
  4. 平均値を算出する。

【結果】
表)ダメージ実験結果

  • 開始後5分程で低活性状態に入り、平均27分で死滅した。
  • ゴカイやイソメの様に、ボディの一部を切り離しても生存できる生物ではないことが判明。
  • 傷口からは体液が徐々に流れ出(流れ出た部分は色が薄くなるので分かる)、その量が増えるに従い活性が落ちてくることを確認。
  • また、別に行った実験では、頭側を切断するとほぼ即死することが分かっています。
冷凍実験

【目的】
食べる対象の魚を冷凍すれば、アニサキスは死滅すると言われているが、その有効性を検証する。
どの程度の時間冷凍すれば安全か検証する。
それら結果を加熱しない料理のレシピに役立てる。

【実験方法】

  1. 生サバを3尾を家庭用冷蔵庫の冷凍室で冷凍する。
  2. 6/12/24時間後にそれぞれ取り出し、冷蔵室に移動する。
  3. 冷蔵室で12時間自然解凍後にさばく。
  4. アニサキスを全て採取し、総数および生体数をカウントする。
  5. 生体アニサキスは、真水深さ5㎜に浸した小皿に入れ、10分後に高活性と低活性に分け、その数量をそれぞれカウントする。
  6. 生存率を算出する。

【結果】
表)冷凍実験結果

  • 6時間冷凍では、13%が生存しており、効果が十分でないことが分かりました。
  • 12時間以上冷凍したものは、生存ゼロで効果があることが分かりました。

【もう一つの参考実験】
あくまでも参考として、採取したアニサキス単体を製氷皿で凍らせたらどうなるか、調べてみました。

冷凍実験(製氷皿)

(↑製氷皿にアニサキスを入れて冷凍)

冷凍実験(製氷皿)解凍後

(↑解凍後、組織が破壊され死滅)

結果、6時間で検体4匹全数が死滅しました。
カチカチに凍った環境ではアニサキスは生きられません。

安全を見た冷凍時間は、アニサキスが寄生してる魚のサイズによって変わると考えてよいでしょう。
家庭用冷蔵庫に入るサイズの魚(中型魚まで)であれば、一般的に言われている「-20℃24時間冷凍」で十分安全と思われます。


【追加・変更 履歴】

2017/4/27 クレイジーフィッシングにて公開
2017/7/27 【ダメージ実験】の内容追加/【アニサキス食中毒】の文言追加
2017/8/22 【食物アレルギー】の説明追加
2017/11/2 【アニサキス症について】の説明追加、および全体の構成見直し


【参考文献】

「【図説】魚の目きき味きき事典」成瀬宇平/西ノ宮信一/本山賢司
「魚料理のサイエンス」成瀬宇平
「海から生まれた毒と薬」Anthony T.Tu/比嘉辰雄


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