釣り針のあれこれTOP写真

世界の中で大変釣り文化が発達した日本、その日本における釣り針の歴史、機能、他あれこれをざっくり紹介

興味のある部分だけ拾い読みして頂いても結構です。
少しでも釣り愛好家の皆さんのご参考になれば幸いです。

日本の釣り針

我が国においての釣り針は、古くは縄文時代から既に使われていたことが分かっています。
宮城県牡鹿郡沼津貝塚から出土した縄文時代の25本の釣り針は、多様な形をしています。
現在のような針先の内側に「カエシ」が付いているものもありますが、構成比では外側にカエシが付いているものが多いのです。

出土品シルエットイメージ(代表例)

1_釣り針出土品イメージ(シルエット)_500x300

それも日本民族の長年の試行錯誤の結果、有史時代になると現在のような内カエシオンリーとなっていきました。

釣り針の素材は、古くは木や竹などで作られていましたが、その後、鹿の角などの骨角が利用され、続いて真鍮、そして金属文化の到来と共に金属針が作られて今日に至ります。

昭和の最盛期では、驚くことに約1000種類もの釣り針が生産され使用されていたといいます。
種類の多さに加え、関東と関西では号数の基準が異なる(関東:重量、関西:長さ)など、国内においては大変収拾がつかない事態となっていたようです。

現在では、関東・関西で基準が異なるということはありませんが、それでも釣り針は進化しており、例えばクロダイ(チヌ)釣り用の針一つとっても「カセ・筏釣り用」「落とし込み用(イガイをエサとする)」などの特定の釣法に絞り込んだ特殊仕様になっていたり、コーンなどの特定のエサに対応した針(黄色に着色)などもあり千差万別です。

これもユーザーのニーズに応えた、釣り針メーカーのたゆまぬ努力が背景にあったものと思われます。
我々ユーザー側から見れば、狙う対象魚と釣法がはっきりしていれば、自ずと最適な釣り針が見つかるという嬉しい状況にあるとも言えます。

部位名称

釣り針の部位名称を以下の図に示します。
但し、これは管理人の独断と偏見により、現在最も一般的と思われるものを図中に記載していますが、その他の名称も沢山あり、それらは図下の説明にカッコ書きで付け加えました。

2_釣り針イメージ_500x330

  1. 針先 (さき)
  2. カエシ (アゴ、モドシ、モドリ、アグ、カカリ、イケ)
    掛かった魚をバラさない為のストッパーの役割を担っています。
    但し、元々はゴカイやカニなどの生き餌の脱落・脱出防止の為に付けたものとの説もあります。
    カエシが無いハリ先のことを「スレ」と言い、そのようなハリのことを「スレ針」と言います。
  3. 腰 (腰曲げ、腰曲がり、大曲げ)
  4. 軸 (くき、銅)
  5. ケン (アゴ)
    上記②カエシと違って、こちらは明らかに虫エサの脱落・脱出防止の為だけに付いています。
    従って、虫エサを使う、カレイやキス釣り用の針に付いていることが多いです。
  6. チモト (カエシ、シリ、アタマ)
    針にハリスを接続するための部位。平べったい形(ハリスを直接結ぶタイプ)のものが一般的ですが、リング型(アイと言う)になっているものもあります。

これらを全部覚えるのは大変ですが、最低限「カエシ」と「チモト」を覚えておけば問題無いと考えます。

釣り針が上顎・上唇に掛かる理由

釣りをやっている人ならおわかりと思いますが、魚が釣れた時、針が魚のどこに刺さっているか。
大半のケースは、上顎または上唇です。

3_chinu_230x320 4_haze_240x320

これは何故なのでしょう?
実は、針の形状と魚がエサと共に針を吸い込む時の動作に理由があります。

まず下図を見てください。

5_針の左右重量比べ_500x460

釣り針を糸で垂らした状態において、中心線を境に左側(軸側)と右側(針先側)の重量を比べた場合、明らかに左側が重いことがわかります。

次に魚がエサを食べるという動作は、両サイドのエラ蓋から水を排水することによって、口から水とエサを吸い込むことによって行われます。

6_魚の吸排水_500x500

エサの付いた針が魚に吸い込まれた時、針の重量が軽い方、つまり針先側を先頭に吸い込まれます。

針は当然の如くハリスで接続されているので、魚の吸引力とハリス側の状況(ウキの浮力等)にもよりますが、魚の口内でストップが掛かり、魚上唇を支点としてブランコの如く針先を上にして針が跳ね上がり、魚の上顎に刺さるという仕組み。

ここで上顎に刺さらなくても、魚の吸引動作と共に発生する釣る側に示されるアタリにより、釣り人が合わす動作を行えば、針先が上向きになっている針が、上顎または上唇に刺さるというわけです。

下の模擬実験動画(音声なし)を見て頂ければ、よく理解いただけると思います。
【模擬実験動画はこちら】(YouTube)

このように、釣り針の形状は大変理に適ったものではありますが、実際はエサの状態、仕掛けの種類、捕食する魚の体勢などの違いにより、必ずしも上顎や上唇に針が掛かるわけではありません。

我々釣り人は、このメカニズムを考慮した上で、エサの付け方や仕掛け作りにおいて試行錯誤を繰り返していけば、上達の早道となるのではないでしょうか。

釣り針購入の注意点

現在の釣り針のほとんどは、高炭素鋼によって作られています。
これは鉄の他に、炭素・珪素・マンガンなどが含まれており、大変硬く折れにくい鉄です。

釣り針購入時、その種類の多さに戸惑うこともあるかと思います。
有名メーカー製であれば、その生産国を問わず問題になることはありませんが、無名メーカーの海外生産品(中国など)で尚且つ安価な物は、要注意と思ったほうがいいでしょう。

小物などの釣りには問題無いかもしれませんが、大物が釣れてその魚の口から針を力を入れて外そうとするだけで、針が変形してしまうことがあります。(大物の唇は硬い)
下手をすると、釣り揚げた時、釣り針が既に変形していることもあります。
安物買いの銭失いにならないよう、注意をしてください。


参考文献: 『釣りの科学』森秀人著、『釣りの科学』檜山義夫著
*両者は同名書籍を執筆しているが全くの別物


[Amazon PR] ハリ結び器


<更新履歴>
2014/10/28 記事公開